このページでは、職業訓練期間中に受け取れる給付金「職業訓練受講給付金(求職者支援制度)」をテーマに、受給の要件や受給金額、受給の方法などをまとめています。
職業訓練中、どうしても心配になるのがお金のこと。受給には条件がありますが、それを満たす人であればある程度まとまった金額が毎月受け取れます。
安心して訓練を受けるためにも、ぜひこのページで職業訓練受講給付金について理解を深めていただければ幸いです。
目次
職業訓練の給付金「職業訓練受講給付金」とは
「職業訓練受講給付金(求職者支援制度)」とは、職業訓練期間中の生活をサポートするための給付金が受けられる制度のこと。
ただし職業訓練の中でも失業保険(雇用保険の失業給付)を受給していない人が受ける「求職者支援訓練」が対象なので、その点は要注意。
職業訓練を受けているということは、当然ながら求職中ということですから、金銭面で不安に思うこともあるでしょう。せっかく職業訓練で専門的なスキルを身につけ、早く就職したいと思っていても、経済的に厳しいとなると訓練もままならなくなりますよね。
そんな人たちの不安を国が支援するために考案されたのが、職業訓練受講給付金なのです。
職業訓練受講給付金は、職業訓練を受講している人のうち、一定条件を満たしている人がもらえるます。対象者・条件についてはこのあと詳しく紹介していきますが、職業訓練を受講している人が全員もらえるお金ではないので、そこは勘違いしないようにしてください。
職業訓練給付金と教育訓練給付金の違い
「職業訓練受講給付金」と少し似ている給付金に「教育訓練給付金」があります。
この教育訓練給付金も、再就職のためにスキルを身につけたいという人をサポートする制度のひとつですが、こちらは教育訓練のための受講にかかった費用の一部が支給されるというもの。
厚生労働省が認めたスクールに通った場合、その費用の最大20%が支給される教育訓練給付金に対し、職業訓練給付金は職業訓練(求職者支援訓練)を受けている人のうち、特定の条件を満たす人の生活費を一部負担するというものなのです。
給付金の支給金額!いくらもらえる?
ではこの職業訓練給付金はいくらくらいもらえるのでしょうか?受給額を見ていきましょう。
項目 | 支給額 |
---|---|
受講手当 | 月額 100,000円 |
通所手当 | 職業訓練校までの交通費 ※ |
寄宿手当 | 月額 10,700円 |
職業訓練によって再就職に有利なスキルを無料で習得できるうえ(テキストは自己負担/1年以上の訓練は有料になる場合あり)、職業訓練期間中に上記の生活費がもらえるのはかなり高ポイントだと思います。
もちろん返済の必要はないので、奨学金のようにあとあと苦労することもありません。
ちなみに寄宿手当とは、訓練を受けるために同居していた家族と別居した人や一人暮らしの人に支給される手当ですが、この手当を受ける人はほとんどいないと思っておいてOKです。
給付金の支給対象は?支給要件・支給条件
ではこの職業訓練受講給付金は、どんな人が対象で支給されるのでしょうか。支給対象者や支給要件・支給条件について紹介します。
対象者は?
まずは支給の対象者について。厚生労働省のHPに掲載されていますが、以下すべてを満たす人を「特定求職者」と呼び、この特定求職者が職業訓練受給給付金の対象となります。
- ハローワークに求職の申し込みをしている
- 雇用保険の被保険者や雇用保険受給資格者ではない
- 労働の意志と能力がある
- 職業訓練を行う必要があるとハローワークに認められた
例えば雇用保険に加入できなかった人や、雇用保険の失業給付を受給している間に再就職できなかった人、また雇用保険の加入期間が足りなかったため失業給付を受けられない人などが対象になるわけです。
また就職が決まらないまま学校を卒業し、ハローワークで求職中&職業訓練を受けている人も対象になります。
ちなみにこの失業保険を受給していない人が受ける職業訓練は「求職者支援訓練」と呼ばれ、雇用保険加入者が受ける「公共職業訓練」とは区別されています。
支給要件は?
次に、支給要件を見ていきましょう。以下の条件をすべて満たしていなければ給付金を受け取ることができません。
- 本人収入が月8万円以下
- 世帯全体の収入が月25万円以下
- 世帯全体の金融資産が300万円以下
- 現在住んでいるところ以外に土地・建物を所有していない
- 全ての訓練実施日に出席している ※
- 世帯の中に同時にこの給付金を受給して訓練を受けている人がいない
- 過去3年以内に、偽りその他不正の行為による特定給付金の支給を受けたことがない
※やむを得ない理由がある場合も、支給単位期間ごとに8割以上出席していること。
この条件を見ると職業訓練受講給付金は、“職業訓練を受けて専門スキルを身につけ再就職したいものの、現実的に生活費の不安が大きい人”を支援するためのお金だということがわかりますね。
給付金受給中の職業訓練について
支給要件にありますが職業訓練を1日でも欠席すると職業訓練受講給付金は支給されません。
支給は1ヶ月単位ですが、支給の有無もこの1ヶ月が基準になります。遅刻や早退も欠席扱いなので要注意。
ただし病気などやむを得ない理由で欠席する場合、8割以上の出席率であれば支給対象になってきます。もちろんそれも証明する書類が必要(医師による診断書など)。
つまり病状を証明書類する書類があったとしても、長期入院で1ヶ月のうち出席率が8割を下回ってしまうと支給対象とは見なされないのです。
給付金受給中のアルバイトについて
収入が月8万円以下であればアルバイトをしても問題はありません。ただし雇用保険に加入してしまうと支給を受けることはできませんので、その点は頭に入れておきましょう。要するに「雇用保険に加入する=安定した職に就いた」と見なされるということですね。
また週の労働時間が20時間以上の人は「特定求職者」と見なされないので、支給対象から外れます。
アルバイトの交通費はこの8万円に含まれませんが、注意しておきたい点も。例えば給与85,000円のうち、交通費が5,000円と給与明細などで明確に区分されていればいいのですが、給与85,000円(交通費含む)のように、交通費が区分されていない場合は条件を満たさないと判断されてしまいます。
不安な場合はハローワークで相談してからアルバイトを始めることをおすすめします。
職業訓練給付金の手続きについて
職業訓練受講給付金はどんな手続きが必要になるのでしょうか?
- ハローワークで求職申込を行う
- ハローワークで求職者支援制度の説明を受ける
- ハローワークで職業訓練の受講申し込みをする
- 職業訓練校で選考(面接・筆記試験など)を受ける
- 合格したら訓練開始日までにハローワークに行く
- ハローワーク作成の就職支援計画に基づき指示を受ける
- 受給開始(1ヶ月ごとの支給)
それほど難しいことはありませんが、ひとつの難関が職業訓練の選考に合格すること。ここで合格できなければ、職業訓練を受けることはできませんから、当然ながら給付金も受けることはできません。
人気の訓練(コース)になると、倍率が3~5倍と高くなることもあるようなので、下準備などを整えて臨むことが重要になってきます。
また訓練の受講中から終了後3ヶ月間は原則毎月1回、ハローワークに行って(指定来所日)定期的な職業相談を受ける必要が。給付金の支給申請もこの相談日に行われます。
税金による支給金を受け取るわけですから、しっかりと訓練を受けるだけでなく、再就職に向けて前向きに求職活動を行うことが大前提となってきます。受給者側もそれを心して臨むべきでしょう。
職業訓練の給付金需給に必要な書類
職業訓練の給付金を受給するために必要な書類が以下です。
- 番号確認書類(マイナンバーカードなど)
- 身元確認書類(マイナンバーカードや免許証など)
- ハローワークから交付された各種様式 ※
- 直近3ヶ月以内交付の住民謄本写し(もしくは住民票記載事項証明書)
- 前月の世帯の収入を証明する書類
- 残高が50万円以上である預貯金通帳(もしくは残高証明)
- 給付金の振込先の通帳
※受講申込書、受講申込・事前審査書、職業訓練受講給付金要件申告書、職業訓練受講給付金通所届
他にハローワークから求められた書類は当然ながら提出する必要があります。
給付金の審査は厳しい?落ちた人はいる?
インターネット上で調べてみると「職業訓練受講給付金の審査は厳しい?」といった質問などが複数見受けられます。
これは正直、愚問ですよね。審査が厳しいか緩いか…そういうことではなく、対象者や支給要件がしっかり定められ、さらに「定員〇名」といった縛りがあるわけでもないのですから、現状を真っ当に申告し、対象者であって支給要件に当てはまるなら支給してもらえる、そうでなければ支給されない。これだけのことだと思います。
しかし中には所有資産などを誤魔化して申告する人がいるかもしれません。もちろんハローワークだって一人ひとり家宅捜索をして調査するようなことは現実的に難しいでしょう。
ただ税金でまかなわれている支給金を不正受給した場合は、受給金額の3倍の金額を支払う必要があり、場合によっては詐欺罪で告訴されることもあるので、不正をはたらいての受給は絶対にNGです。
このページのまとめ
生活費に余裕がなくても、ある程度安心して職業訓練を受けることができる職業訓練受給給付金。
条件があるので受給することができない人もいると思いますが、もし自分が受給対象者であるとわかった場合はぜひ申請していただきたいと思います。
また大事なことは給付金は就職をサポートするためのお金だと常に理解して受給すること。これが頭にあれば求職活動にも身が入ることでしょう。