このページでは、失業保険受給中の職業訓練をテーマに、手当の種類や具体的な金額、また失業保険受給中に職業訓練を受けるメリット&デメリットなどを解説しています。
失業保険の受給中に職業訓練を受ける場合、失業保険の給付期間を延長してもらえたり、給付開始を前倒ししてもらえたりと、大きなメリットがあります。
一方、頭に入れておきたいデメリットもあるので、このページを読んでしっかり覚えていってくださいね。
目次
失業保険をもらいながら職業訓練が受けられる!
雇用されているときに雇用保険の被保険者だった人が離職した場合、失業保険(正しくは雇用保険の失業給付)を受給することになります(自己都合で退職した場合は支給制限により3ヶ月が経過してから支給)。
失業保険は、離職中の経済的不安のカバーと、次の就職促進を目的に支給されるお金のこと。この失業保険をもらいながら、職業訓練校に通うことも可能です。
新しいスキルを身につけ、求職活動を有利に進めたいという人は、職業訓練の受講を検討するのも良いでしょう。
職業訓練は別名「ハロートレーニング」と呼ばれていますが、実は2つの種類に分けられます。
- 公共職業訓練:失業保険を受給している人が対象
- 求職者支援訓練:失業保険を受給していない人が対象
※失業保険=雇用保険
職業訓練は働きたいと思っている人を対象としたスキルアップのための訓練で、受講は基本的に無料です(テキストは自己負担/1年以上の訓練は有料になる場合あり)。
そのうち上記で紹介したように、失業保険を受給している人が受ける訓練は「公共職業訓練」に分類され、金属加工、電気設備、建築、介護、情報処理などさまざまなコースが用意されているのです。
職業訓練の受講期間はコースによって異なり、2~6ヶ月の訓練が多いものの、中には1~2年と比較的長期の訓練も。ただ訓練の目的は「就職をすること」ですから、職業訓練中に採用が決まった場合は、基本的に訓練を終了して就職すると考えておきましょう。
職業訓練でもらえる手当の種類と金額
失業保険をもらいながら職業訓練(公共職業訓練)を受講する場合、さまざまな手当が支給されます。
手当の種類や金額について、具体的に見ていきましょう。
まず肝心の雇用保険(失業保険)については「基本手当」として、職業訓練受講中も満額受け取ることができます。
この基本手当(失業保険)に加えて支給されるのが以下。
- 受講手当:1日500円(40日間)
- 通所手当
- 寄宿手当
受講手当は2012年3月まで、受講中の昼食代として支給されていたのですが、同年4月の法改正以降、教科書の購入補助費として支給されることとなり、最大40日という制限が設けられました。
とはいえ500円×40日で合計20,000円。もらえないよりもらえた方が有難いのは明白ですね。この受講手当はまとめて40日分の支給ではなく、1ヶ月ごとに受講日数に応じて支給されます。
「通所手当」というのは、自宅から職業訓練校に通う交通費のこと。片道2km以上&月額42,500円が上限というルールはありますが、交通費もちゃんと負担してもらえます。ちなみに交通費については最も料金が安くなる経路が選択されますが、当然のことですよね。
「寄宿手当」というのは職業訓練を受けるために、同居している家族と離れて住む場合に支給される手当ですが、職業訓練校は全国各地に複数ありますし、この手当をもらう人はそれほど多くないと思っておいてください。
例えば基本手当が1日5,000円、交通費が往復700円の人が、ある年の1月に職業訓練を20日受けた場合の支給額は、以下のような計算になります。
手当 | 日数 | 1日当たりの支給額 | 合計金額 |
---|---|---|---|
基本手当 | 31日 | 5,000円 | 155,000円 |
受講手当 | 20日 | 500円 | 10,000円 |
通所手当 | 20日 | 700円 | 14,000円 |
合計金額 | 179,000円 |
失業保険がもらえない人の職業訓練もある
先ほど少し触れましたが、職業訓練(ハロートレーニング)のうち、「求職者支援訓練」については失業保険がもらえない人を対象とした職業訓練になります。
雇用保険に加入していなかった人、雇用保険に加入していたものの失業保険受給中に再就職できなかった人、学校を卒業したあと就職しないまま現在求職している人などが受ける職業訓練のことですね。
なお、この求職者支援訓練を受講する人のうち、一定の条件を満たした人であれば、「職業訓練受講給付金」の支給を受けることができます。
受講手当月額10万円+通所手当+寄宿手当という内容になっているので、失業保険をもらっていない人はこちらを検討しましょう。
失業保険の受給中に職業訓練を受けるメリット
ここからは失業保険(雇用保険の失業給付)を受給している間に職業訓練(公共職業訓練)を受講するメリットを整理したいと思います。
無料でスキルを身につけることができる
次の就職のための専門的なスキルを無料で身につけることができるのは、最大のメリットだと言えるでしょう(1年以上の訓練は有料になる場合あり)。
一部の教材やテキストなどは自己負担になりますが、それでも2ヶ月~最長2年ほどの職業訓練を無料で受講できるのは、かなりの利点だと思います。
受講手当や交通費が支給されることがある
職業訓練を受講する間は失業保険(基本手当)の他に、受講手当が1日500円(最大40日間)と交通費が支給されます(場合によっては寄宿手当も)。
金額としてはそれほど大きくないかもしれませんが、それでも失業中に手当がもらえるのは有難いこと。交通費だって馬鹿になりませんから、これもメリットと言えます。
失業保険受給の期間が前倒しになる
例えば勤めていた会社を自己都合で退職した場合、通常だと3ヶ月の給付制限期間ののち、失業保険が支給されることになります。
自己都合で退職する人は当然その時期がわかっているのですから、退職後の生活費などを蓄えてから辞めることができるはず。そのあたりが考慮され給付制限がつくのです(会社都合の場合はすぐに支給が開始されます)。
しかし職業訓練を受ける場合、その給付制限が解除され給付制限期間中であっても支給が開始されます。
もちろんすでに給付制限が明けている人なら、これは無関係のメリットになりますが…。
失業保険受給の期間が長くなる
こちらも大きなメリット。
職業訓練を受講している間に失業保険の給付期間が終了してしまったとしても、訓練終了まで失業保険が延長で給付されるのです(最長2年)。
例えば失業保険が3ヶ月(90日)支給される人が、1ヶ月(30日)失業保険を受給したあと3ヶ月(90日)の職業訓練コースを受けるとします。
すでに30日分の支給を受けているわけですから、単純計算で残りの受給日数は「90日-30日=60日」ですが、90日間の職業訓練がスタートしたため、本来支給されない91日目以降も職業訓練が終了するまで失業保険がもらえ、結果的に30日間延長になるのです。
これだけ聞くと、支給期間延長を狙って失業保険終了間近に職業訓練をスタートする人が出て来そうですが…それを防ぐため所定給付日数が一定数残っていないと受講ができないというルールが設けられています(場合によりますが、おおよそ所定日数の2/3を消化する前の受講スタートとされています)。
失業保険の給付手続きが簡単になる
職業訓練を受講すると、失業保険の手続きが簡単になります。
通常だと失業保険を受けるためには、毎月1回ハローワークに通所して、担当職員と面談をしつつ現在の求職活動の進捗を報告する必要があります。
しかし職業訓練を受講している間は訓練校が一括で手続きをしてくれるので、ハローワークに行く手間が省けるのです。毎月1回とはいえやはり面倒なことですから、これはかなりメリットですよね。
失業保険の受給中に職業訓練を受けるデメリット
今度は失業保険の受給中に職業訓練(公共職業訓練)を受講するデメリットを見てみましょう。
デメリットなんてあるの?と思うかもしれませんが、実はマイナス要素もあるんです。
受講コースが限られる
失業保険受給中の人が受講できる「公共職業訓練」のコースには、さまざまなものがありますが、自分が受けたい(スキルアップしたい)と思っているコースが必ずあるとは限りません。
例えばエステティシャンやネイリストといった美容系のコースは、雇用保険を受給していない人の求職者支援訓練のコースにはありますが、公共職業訓練にはありません。
またそもそも職業訓練のコースが存在しないジャンルもあるので、まずはハローワークに相談して希望するコースがあるかチェックしてみると良いでしょう。
もちろん受講するコースを選ぶ際は、今後の就職にどう活かせるのか?求職活動でどうアピールできるのか?しっかりと確認しておくべきです。
すぐに受講できない場合がある
職業訓練はコースによって募集時期・受講開始時期が異なります。需要の多いパソコンや簿記などは、場合によって毎月開講することがあるかもしれませんが、ほとんどのコースは数ヶ月ごとの募集に。
地域によって異なるかもしれませんが、4月開講が圧倒的に多く、次いで多いのが10月、また1月&7月開講のコースもちらほら。
1~2年といった長期のコースはほぼ4月スタートのため、タミングを逃すと受講できないので注意が必要です。
また申し込みから受講開始までに数ヶ月かかることもありますから、思い通りにいかないケースもあるはず。
したがって今すぐに受講したいのに、数ヶ月開講待ちになることも珍しくないのです。ですから最初から計画的に進めていきましょう。
職業訓練の選考に落ちる場合がある
職業訓練は希望すれば誰でも受けられるわけではありません。受講には選考(面接や筆記テスト)があるので、それに合格する必要があります。
人気のコースだと倍率が3~5倍ということも。
面接で重視されるのは「就職する意欲があるか」「企業の面接に受かりそうか」「最後まで訓練を受けられそうか」の3点。
職業訓練の最終目標は「就職すること」ですから、訓練後に就職できなさそうな人や、途中で挫折しそうな人は落とされてしまいます。
絶対に就職できるとは限らない
職業訓練さえ受ければすぐに就職できる、と思っている人がいるかもしれませんが、訓練後に絶対就職できるとは限りません。
スキルを身につけることで確かにアピールポイントができますから、ある程度は有利になるでしょうが…結局採用するかどうかは企業側の判断ですから、甘く見ていては痛い目を見るでしょう。
職業訓練でしっかりとスキルを身につけるだけでなく、再就職の面接対策や自己分析などをしっかりと行っておく必要があるのです。
職業訓練を受けるための手続きについて
職業訓練を受けるための手続きは、それほど難しくありません。
まずはハローワークに相談に行って説明を聞きましょう。
受講したいコースがある場合、窓口で相談すれば最適なコースを提案してくれます。その後申し込みをしたのち、職業訓練校で面接などの選考を受けます。
この選考を通過すれば「受講指示」をもらい受講することができるように。
開講したらとにかく休まず頑張って、スキルをみがきましょう!
ちなみに月1回の失業保険の手続きは、月末に訓練校がまとめて行ってくれるので、後日ハローワ―クに受講証明書を持参すればいいだけです。
失業保険の受給日数が残り少ない人は不利に!
先の失業保険受給中に職業訓練を受けるメリットの「失業保険受給の期間が長くなる」という項目で説明しましたが、失業保険の受給日数が少ない人は職業訓練受講において不利になってしまいます。
人によって退職が自己都合なのか?会社都合なのか?雇用保険の加入期間はどれくらいか?など条件がことなるので、それによって変わってきますが、もう失業保険の受給日数がほとんどないという状態だと、「受講指示」が出してもらえません。
ただしハローワークが職業訓練が必要と判断した場合、規定の日数を過ぎていても職業訓練が受けられる場合もありますが、その際は受講無料になるものの失業保険の延長などの待遇はありません。
いずれにしても職業訓練を検討したら、早めにハローワークで相談することをおすすめします!これ本当に大切なことなので、覚えておいてくださいね。
このページのまとめ
求職活動は実際に大変ですし、会社都合で思いがけず離職するような場合、精神的にも非常に辛い状況になると思います。
しかしそれをサポートしてくれるのが失業保険(雇用保険の失業給付)。
失業保険受給中に公共職業訓練を受けておけば、経済的な不安が少ない状態でスキルアップが可能ですし、なにより支給期間延長などの特典を受けることができるので、ぜひこういった制度を積極的に活用していただきたいと思います!
あなたの求職活動がうまくいくことを祈っています!チャレンジする際はぜひ早めにハローワークで相談してくださいね。